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2017年12月25日 (月)

平成30年度税制改正大綱【組織再編税制】

平成30年度の税制改正大綱が発表されました。その中で「競争力の強化」という項目があり、組織再編税制について言及されている部分をご紹介いたします。

(赤字は原文のままです)

 

 

 事業再編の環境整備

企業外の経営資源・技術を取り込むための事業の再編・統合は、新規技術等への投資と共に、わが国企業の生産性を高めていくための有効な手段である。特に著しい生産性向上等を実現するためには、大規模かつ迅速な事業再編によって、戦略分野への選択と集中、プラットフォームの提供、事業ポートフォリオ転換等を進めていくことが重要であり、これらの特定の事業再編を強力に推し進めていく観点から、自社株式を対価とした公開買付けなど、任意の株式の交換について、交換に応じた株主に対する譲渡損益課税の繰延措置を講ずる。

また、多段階型再編等多様な手法による事業再編の円滑な実施を可能とするため、組織再編税制の適格要件を見直す。

 

 

上記文面から納税者にとって有利な改正になることが読み取れますね。それでは個別具体的な内容を見ていきましょう。

 

 

 特別事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る所得の計算の特例の創設

産業競争力強化法の改正を前提に、法人が、同法の特別事業再編計画(仮称)の認定を同法の改正法の施行の日から平成33331日までの間に受けた事業者の行ったその特別事業再編計画に基づく産業競争力強化法の特別事業再編(仮称)により、その有する株式(出資を含む。)を譲渡し、その認定を受けた事業者の株式の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べることとする(所得税についても同様とする。)。

 

 

現在の税制ではいわゆる株対価TOBについて旧株主側に譲渡益課税が行われます。

 

例えば、A社がB社を買収する場合、B社株主が持っているB社株式(簿価100円)とA社が発行するA社株式(時価300円)を交換するとB社株主に200円の譲渡益課税が行われます。

 

「B社にはお金が入ってこない」のに税金がかかります。

 

ですので、今の日本では買収する際に株対価TOBが採用されることはほとんどありません。納税資金の問題で株主に反対されてしまうからです。

 

そのため、A社は金融機関などからお金を調達して、そのお金でB社株式を買い集めることになり、利息など多大なコストがかかってしまいます。

 

外国では株対価TOBが日本に比べれば普及しているため、それに乗り遅れないために上記改正が実施される予定となりました。

 

ただし、産業競争力強化法の認定を受ける必要があるとされている点に注意が必要です。

この認定を受けるためのハードルの高さによっては株対価TOBが普及することはない、すなわちこの改正は無意味なものになってしまうと思います。

 

ちなみにこれはあくまで課税の繰延べ措置ですので交換後の株式を売却した場合には税金がかかることになります。

 

例えば、上記例の後、旧B社株主が400円でA社株式を売却した場合、400100(旧B社株式の簿価)=300円が利益となります。

 

 

 完全支配関係がある法人間で行われる当初の組織再編成の後に適格株式分配を行うことが見込まれている場合の当初の組織再編成の適格要件のうち完全支配関係の継続要件について、その適格株式分配の直前の時までの関係により判定することとする。

 

 

これは前回のブログで紹介したスピンオフに係る組織再編税制と密接に関係してくるのですが、現在の税制では、例えば許認可が必要な事業を分離するために、親会社が先に100%子会社である受皿法人を設立し、許認可を先行取得した上でその法人に対し吸収分割により事業を移転した上で株式分配を行うと、その吸収分割は株式継続保有要件を満たすことができず、非適格組織再編として課税されてしまいます。

 

しかしそれでは事業再編の円滑な実施に支障をきたすため、株式分配の直前まで完全支配関係を継続していれば税制適格要件を満たすこととされる予定です。

 

 

 当初の組織再編成の後に完全支配関係がある法人間で従業者又は事業を移転することが見込まれている場合にも、当初の組織再編成の適格要件のうち従業者従事要件及び事業継続要件を満たすこととする。

 

 

現在の税制では、例えば50%超100%未満の支配関係がある法人間で合併をし、その後合併で引き継いだ従業者をその法人の100%子会社へ転籍させることが見込まれている場合、その合併は非適格組織再編として課税されてしまいます。

 

しかしそれでは事業再編の円滑な実施に支障をきたすため、完全支配関係がある法人に従業者や事業そのものを移転する見込みである場合に限り税制適格要件を満たすこととされる予定です。

 

 

 いわゆる無対価組織再編成について、適格組織再編成となる類型の見直しを行うとともに、非適格組織再編成となる場合における処理の方法を明確化する。

 

 

現在の税制では無対価組織再編成については基本的に非適格組織再編成とされ、以下の要件を満たすものだけ適格組織再編成として取り扱われます。

 

 

(1) その合併前に次のイからニまでのいずれかの関係があること

イ 合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係

ロ 一の者が被合併法人及び合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係

ハ 合併法人及びその合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係

ニ 被合併法人及びその被合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係

(2) 合併後に同一の者と合併法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれること

 

 

ですので、例えば100%孫会社と100%子会社が無対価合併をする場合、上記要件を満たしませんので非適格組織再編とされてしまいます。

 

まだ詳細な内容は公表されていませんがおそらく上記のようなものについては適格組織再編とされるような改正がなされると思われます。

 

 

組織再編税制が使いやすくなることは納税者にとって有用な選択肢が増えることになります。

 

知っているのと知らないのとでは大きく税額が変わってきます。

 

弊社ではこういった組織再編に関するコンサルティング業務も行っておりますのでお気軽にお問い合わせ下さい。

 

 

あすか税理士法人

大井 幸助

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